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私はD郎先輩に本日三度目となる、昨夜の出来事を話した。
そして怪我のことについてB助と話そうとしたところ、会社を辞めろと一方的に言われたことを話した。
D郎先輩は信じられないといった感じの反応。
それは気持ちは私にもわかる。
私だって昨日の夜まではB助がそんな事言う人だなんて思わなかった。
会社での彼もずっと見ていたけど、あんなふうに人に怒鳴る姿なんて一度も見たことなかった。
でも、私は嘘を言ってない。
B助にはみんなの知らない顔があっただけだ。
私は証拠を送ると言って一度電話を切り、D郎先輩の会社のアドレス宛にさっき兄が撮った動画とB助とのLIN○のスクショを送った。
そしてもう一度会社に電話をかけた。
「今先輩宛に動画を送ったんですが。」
「うん、今見るね。」
電話の向こうから、さっきのB助の怒鳴り声が聞こえてきた。
D郎先輩がちゃんとあの動画を見てくれていることがわかった。
「これは…、ヒドいね…。」
「はい。手首の怪我で今週一週間お休みをもらっていますが、来週から出勤しても大丈夫かなと思って、急ぎ上司さんに相談したかったんです。」
「こんなこと言われたら、不安だよね。明日朝一番で上司さんにこれ見せるよ。会社のことはこっちに任せて。A子さんは怪我を治して、来週からまた一緒に働きましょう。」
「はい。ありがとうございます。失礼いたします。」
「どうだった?」
「多分信じてくれたと思う。それもこれもお兄ちゃんのおかげだよ。ありがとう。」
兄は何も言わず、私の頭をクシャクシャとなでた。
2日後。
会社から電話がかかってきた。
相手は上司。
「昨日D郎君から動画を見せてもらって、今日B助君と話をしたよ。最初は『そんなこと言ってません。』と否定していたけど、あの動画を見せたら態度が変わってね。私も…、彼のあの姿には驚いたよ…。」
「え…。あの…、動画を見せたらB助さん、どんな反応を?」
上司は少し躊躇った後に教えてくれた。
なんとB助はあの動画を見て頭に血が上ったのか、『あの女、録音してやがったのか!汚い手使いやがって!』と叫びだしたのだ。
あまりの豹変ぶりに上司も目を疑った。
が、同時に私の話の信憑性が増した。
その後、上司に激昂した態度を咎められたB助。
『君にA子さんを辞めさせる権利はない。別れる別れないはプライベートなことだけど、そのことで仕事で嫌がらせをしたりすることのないように。』と、釘を差してくれた。
「そういうことだから、来週から安心して出勤してください。」
「ありがとうございます。プライベートなことなのに、職場に迷惑をかけてしまって申し訳ございませんでした。」
私が謝ると、『気にしないで。』と優しく言ってもらえた。
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