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景子は、枕元で鳴ったスマホの音で目を覚ます。
普段と違う匂いと、布団の感触に、昨晩の記憶を探ってみるが、敦の声を聞いたのが最後だという事以外記憶にない。
(そうだ。お母さん!)
立ち上がろとしても、手足に力が入らない。腕になにか管のような物が刺さっている。
「先生。先生。患者さんが目を覚まされました」
「あぁすみません。先生。僕が話を聞いてもいいですか?」
景子は、知らないだろう男性と、先生と呼ばれた男性から話を聞く事になる。
昨晩、刺されて、運び込まれた、母親は治療の甲斐なく、死亡が確認された事、そこに駆けつけようとした、敦と景子の乗る車に、後続車が突っ込んだ事。そのときに、敦が景子をかばって、死んでしまった事。
そして、その車を運転していた男が、景子の母親を刺したのを自供した事。
時間をかけて、これらのことを説明していった。
何度、嘘だと思いたかったか、気が狂ったほうが楽だったろう。
残されたのは、敦と母親のスマホだけ。母親のスマホは、刺されたときに、壊れてしまっていた。
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