第十二章  父の病気

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「絶対、茶化さないでね」 「ああ、もちろん」 「ふざけたら、私、自殺するかもしれないのよ」 「大丈夫、探偵は依頼人を、どういう状況でも受け止める」  彼に向き直し、 「高校二年の頃。父が入院していた病院から…… 私とお母さんが呼ばれたの」 「それで」 「私のお父さん、自己免疫のせいで、肺胞がつぶれていく病気だった。その免疫を止めて、本人の治癒力に期待するしかないって」 「難病なんだ」 「私は、『何か、クスリは、ないのですか?』って、聞いたけど、『ステロイドという、自己免疫、それを抑えるクスリを継続して投与しています』という答え。あの時の私には難しいのよ。『亡くなった、前の浦添市長と同じ病です』だって……父も同じように、死にますって意味なのよ」 「…… あの市長のことは、残念だったって、よく耳にするよ」 「そんな死ぬ運命なんて、絶対いやよ。ガンというわけでもないし。手術とか、出来ないのですか? と聞いたら、『親族からの肺移植とか可能だが、それでも移植後、完全に回復するかどうかは、分からない』って軽く言うの、今でもよく、覚えている…… 冷たかった。医者は何人も患者を相手してるけど、私には、ただ一人の父よ」
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