第一章 怪

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病院の構造に疎い人が最初に考えるのは、 『その部屋の中では、携帯電話(スマホ)を使え無いようにする為だろうか』だと思う。 鉄か鉛か、特別な何かが、壁の素材として使われているのだと。 痩せた男は脱いだ上着を、機器の傍に掛けた。薄い青色で、胸元には『丸電』と会社のマークが赤糸で刺繍されている。   昼間、弁当を食べていた時から、着けていた作業服で、一目見たら記憶に残るほど赤色の字が印象的だ。 その服の真上に、外気を取り入れるダクトの口があり、僅かながら冷たい空気が入り込んでいるのを、彼は肌で感じ取っていた。 服を少しでも冷やして、乾かしたいと考えたのだ。 ドンと壁を手で叩いた。
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