この花に想いをのせて

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 放課後の行動にも変化が現れてしまっています。  温室で会っているうちに、何とか普通の会話もできるようになりました。その時の流れで聞いたのですが、湊くんが所属していたのはテニス部だったようです。  どうしても筆が進まない際は温室から抜け出し、彼がテニスをしている姿を遠くからこっそりと観させて頂いてました。そこにはいつ行っても彼の追っかけらしき先客の群れがあり、黄色い声が上がってます。まさか私がその仲間入りをしてしまうことになろうとは、つい最近まで想像だにしませんでした。  湊くんの姿を温室の外で見る度に、実感してしまいます。  彼が、男女問わず人気者であることを。……彼に、私は相応しくないことを。  もちろん、そんなことはわかりきっていました。達観したつもりでいました。私は密かに想っているだけで良いのだと。  しかし恋とは、そう単純な話ではないのだということを、痛感もしてしまいます。  いつか、気づいてくれるのかな、って。……気づいて欲しいな、って。  気づいてくれた時、どんな反応をされるのかな、って。  どきどき、わくわく。期待に胸を膨らませてしまっている自分がいました。  そんなに上手くいかないことぐらい、わかっちゃいます。でも……妄想の中でぐらい、いいじゃないですか。  私と湊くんが〝恋仲〟に発展してしまうような、そんな未来を想い描いても。  そういった妄想をしょっちゅうしてしまうのも。時々少しだけモヤっとした何かが胸を掠めてしまうのも。なんだか楽しくて、どこか新鮮で、満たされた気持ちになってしまいます。  それは私が経験不足で、精神的に幼いからなのでしょうか。恋のなんたるかを知らないからなのでしょうか。  いずれ、ワガママになり、欲張りになり、痛みを感じるようになり……想うことが、辛くなるものなのでしょうか。  恋とは、なかなか……末恐ろしいものなのかもしれませんね……。  ちゃんと綺麗に咲いてくれるのでしょうか。私に芽生えた、この〝初恋〟という想いは。
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