この花に想いをのせて

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 ――ここは和弥の部屋。  高校生男子としては片付き過ぎているその部屋は、これまで友人の侵入を許したこともあまりない。駄弁(だべ)るには狭く、玩具や漫画などもない。良く言えばシンプルではあるが、〝味気ない〟と称した方が正しい部屋だ。  本日は珍しく、そこに佇む一人の女性の姿があった。……と言っても、彼の姉である『私の』だが。 「あれ、姉ちゃん? どしたの、俺の部屋で」 「アンタの部屋、しばらく見ない内に随分と乙女チックになったわねぇ」 「ははっ、いいだろコレ。同級生の子に貰ったんだ」 「そう、ね……」 「……?」  腕を組み、私は記憶を辿る。和弥はその様子を怪訝(けげん)そうな顔で伺う。 「ね、アンタさ。この絵くれたのって、女の子よね?」 「そうだけど?」  再び唸りつつ考え込む。自分の憶測に過ぎない、確証の無いこのことを、弟に伝えるべきか否かを。  もしその憶測が合っているのならば、この絵の送り主もまた回りくどい手段を取ったものだと苦笑してしまう。  それも、こんな――〝超〟がつくほどに鈍い、我が弟に対して、だ。
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