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身内の贔屓目もあるかもしれないが、弟の見てくれは極上だと思う。しかしなぜか女っ気がさらさらない。それは偏に、彼の〝鈍感さ〟が招いている結果だろうと思っていた。
以前から幾つか、「どう見てもアンタに気があるでしょ?」ってアプローチのされ方をしていたことを知っている。相手の女性を気の毒には思ったが、良くも悪くも定番なやり方であった為、さして興味を持たなかった。
だが、今回のこの花の絵は――過去稀に見る珍妙なやり方だった。
飾られた絵の一枚一枚が丁寧に描かれており、花をこよなく愛していることもしっかり伝わってくる。それ故に、その花に想いを込め、密かなラブレターとして渡した。そんなところだろうか。
きっと健気で、奥手で。一途で、一生懸命な子なのだろう。恋の駆け引き的には稚拙にも思えるから、〝初恋〟なのかもしれない。――そこまで思い当たれば、これらの絵それぞれに込められた意味はこんなところか、と納得もする。憶測ではなさそうだと、ほぼ確信に変わる。
何より――花を好きな人に、悪い人はいない。好感が持てるし、つい応援したくなってしまう。
自分の職業柄かそんな風に感じてしまい、お節介が過ぎるかと思いつつも口を開いた。
「じゃあ、たぶんだけど……――」
「――――え?」
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