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「あっ。部活、お疲れ様です」
この頃ではなかなか慣れたもので、挨拶ぐらいなら自然に交わせるようになりました。我ながら大した進歩だと思います。
「ありがと。ふぃー、しんどぉ……」
後ろに手を突いて座り、天を仰ぐ湊くん。そんな何気ないポーズも、どこのモデルさんですかってぐらいキマってます。
「そうだ、藤川さん」
「はい?」
首を傾げながら、なんとかチラチラとでも目を合わせます。大分慣れてきたとは言え、真っ直ぐに目を見ながら話すのは……私には厳しかったです。
「今度の土曜日、試合に出ることになったんだ。と言っても練習試合だけどさ。先輩が言うには、その如何によってレギュラーを決めるかもって」
「おぉー……? そんな試合に出して貰えるってことは、候補に挙がってるってことなんですか?」
「まあ、たぶんそういうこと」
「すごいですね、まだ入部したての一年生なのに」
「これでもスポーツ推薦で入ってるからね。そういうとこで結果残してかないと、肩身も狭くなっちゃうし」
期待の新人さんなのでしょうか。でも授業中の受け答えとかを見てると、学力的にもそんなに問題なさそうに見えますけど。
「でさ。もし予定が空いてるなら、観に来てくれないかな?」
「えっ……わ、私がですか?」
「うん、観に来てほしい。藤川さんに」
湊くんの真摯な眼差しが私に襲い掛かります。
……慣れてきたつもり、でしたけど……やっぱりまだまだダメみたいで、頬がしっかり熱を持ってしまってるのを感じます。でもこんな美形に直視されて平然としていられる女性なんて、この世に存在しないと思うんです。
「じ、じゃぁ……観に、行きます……」
俯いてしまうも、上目がちに何とか答えられました。
やっぱり、湊くんの言葉には……何だか逆らえない魔力があります。
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