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「お疲れさまでした、湊くん!」
「ありがとう、藤川さん」
自分でもビックリするぐらい興奮して、つい詰め寄ってしまいます。
「ほんっと、もうっ、すーっごくカッコよくって――!」
勢い余ってそんなことを口走りました。普段の私ならば、まず有り得ないテンションであり、こうまで素直に思いの丈を吐露することなどできません。はっと息を呑み、慌てて口を抑えますが、当然ながら手遅れです、ばっちり彼に聞こえてます。
若干照れた様子の湊くんの顔を見ると、ますます頬がカーっと音を立てて熱くなってしまいます。消えてしまいたい。
「実を言うと、ギリギリまでガッチガチに緊張してたんだよね。試合前のウォーミングアップでも、らしくないミス連発しちゃってて」
恥ずかしそうに、ぽりぽりと頬を掻く湊くん。
でも――と、私は思ったままの疑問を口にします。
「でも湊くん、試合中は全然そんな風に見えませんでしたよ?」
特にこれと言ってミスなんて見当たらなかった気がします。双方が得ていた得点は、お互いが相手の上を行ったものという印象が強く、死力を出し尽くした名勝負って感じでした。
それとも単に私が素人だからなだけで、湊くん自身の中では細かい失敗があったりしたのでしょうか。
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