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「受け取ってくれる、かな?」
……つまるところ、これは。
私は、絵。湊くんは、栞。
その形は違えども。送り合った……の、でしょうか。
――『ラブレター』を。花に――想いをのせて。
「……ほ……、ほんとう……に? そ、そういう、意味……ですか……?」
「うん。藤川さんが想像した通りで、たぶん合ってる」
何かの間違いなのではないか、夢なのではないか。否応なくそう疑ってしまいます。
けれど、湊くんの……緊張にやや揺れる身体。紅潮した頬。真剣な光を覗かせる瞳。その全てが、雄弁に物語ってくれていました。
伝える勇気などなかった私の想いに、彼は気づいてくれた。勇気を出して、その想いに応えてくれた。
ならば、私がすべきことは? ……その答えなんて、考えずともすぐに出てきます。
栞をきゅっと握った手を胸に当てて、こちらも精一杯の勇気を振り絞り、湊くんの瞳を真っ直ぐに見つめて言葉を紡ぎました。
「――ありがとう、ございます。嬉しいです……すっごく」
想いがこみ上げてきて、視界が微かにぼやけてしまいます。
それでも、いつもの如く眩しい湊くんの笑顔が、私の目にはっきりと映っていました。
それは今の夕日よりも、初めて出会った時よりも、遥かに眩しく、見蕩れてしまう。大好きな人の――今日これからは〝恋人〟となる人の、世界で一番素敵な笑顔でした。
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