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突然聞こえてきた男の人の声に、ビクっと縮こまります。その声の主さんが、そんな私の姿に気づいて、申し訳なさそうに声をかけてきました。
「あっ。ごめんね、驚かせちゃって。それと邪魔もしちゃって」
「い、いえっ……」
ほとんど目を合わせずに応じます。相手を目を見るだなんて同性でも厳しいのに、異性なんて余計に無理でした。
「……あれっ? 同じクラスの……藤川さん、だったっけ?」
驚いたことにご名答です。慌てて無言でこくこくと頷きます。
「良かった。合ってて」
きらっきらした笑顔を向けてきました。思わず同じ人間かと疑ってしまうほどの眩しさです。
でも――この方、どちら様でしょう。
同じクラス、と言ってますけど……目を合わせることもできないのだから、当然ながら顔を覚えることもできないのです。
んー……んん~……――あっ!
そういえば、うっすらと覚えがありました!
この声。クラス内の華やかな男子グループの中でも、特に爽やかで良く通っていた声です。
この顔。直視なんて絶対に不可能だけど、チラリと見ただけでも恐ろしいまでに整っているのがわかります。
たぶんクラスの女子たちがこぞって「カッコいい」と噂していた、その人のような。
――で。名前は、確か……んん~……。
……結局振り出しに戻りました。他の人たち、なんて呼んでたっけなぁ……。
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