0人が本棚に入れています
本棚に追加
「何してたの?」
「……絵を、描いてたんです」
「へえ。良ければ見せてもらってもいい?」
少し躊躇いながらも、首を縦に振りました。彼のお願いには、何だか逆らえない魔力があるような気がします。
――なんでしょう、このかんじ。
「おぉー……すっげ、うっま……! 藤川さんって美術部?」
「それが……この学校、美術部がなかったんです」
「ありゃ、そうなんだ。珍しいね、美術部がないなんて」
「うん。だからこうして、ここで描いてて……」
「なるほどなぁ」
しみじみと頷きながら、私の絵を熱心に見つめてくれています。その目は先ほどこの温室内を見渡した時よりも、輝いて見えました。
――嬉しいけれど。くすぐったくて、むずむずして……へんなきぶん。
「っと、そろそろ部活に戻んないと。またね、藤川さん」
「あ……はい」
――……なんでしょう。ほんの少し、モヤっとしたものが胸を掠めます。
最初のコメントを投稿しよう!