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「バラかあ、いいね。花って言ったらコレ! って感じがして」
それを手に取ってくれたのを感じると、私は色んな意味で力を緩めます。絵がするりと彼の元へ渡り、まじまじと眺めてくれていました。
「でもオレンジって珍しい。あんまりこの色のイメージなかったけど、なんかいいかも。しっくりきてる」
――あなたが笑ってくれた時、その背後に見えた夕日の色にしたんです。
そんなことを伝えられるはずもなく。当然、その絵に込めた本当のメッセージだって、伝えられるはずもありません。
『私はあなたに、一目惚れをしてしまいました。』
この絵は――臆病な私が、ほんの少しだけ勇気を出して、人生で初めて綴った、〝ラブレター〟です。
あなたがその意味に気づいてくれる日は、たぶん訪れないのだと思います。
花に――花言葉に、想いをのせて。我ながら思ってしまいますが、そんな回りくどいやり方では、気づいてくれと言う方が無茶でしょうから。
けれど……芽生えてしまったこの想いの行方がどうなろうとも。たとえそれが、咲いても実をつけない〝徒花〟となろうとも。
私は生まれて初めて他人に興味を持ち、初めての恋をしました。
それはきっと、素敵な青春の一ページに刻まれ、かけがえのない思い出になってくれる。そう信じて踏みだした、自らを心から応援してあげられる一歩でした。
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