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瑞円はその代金を見ながら数える。ひい、ふう、みい……。
「なあ、これじゃあ足りねえ。おれの分がねえ」
「何でおぬしの分までわしが払うのだ」
「だって、おれにゃあ持ち合わせがねえ」
「無いのになぜ何か食おうと誘う。意地汚い。物を乞うのになぜ似た者からたかるのだ。ええい、いたし方無い」
全休はむっとしているのか、巾着から銭を取り出すと乱暴に置いた。巾着をその紐で巻くのも荒々しい。
全休はさっさと歩き出した。
「なあ、待ってくれ。島田宿へ行きてえ」
「なぜ付いて来る」
「いいじゃねえか。なあ、親爺さんは女護ヶ島へ行きたいのだろう。喜多川に会うまで付き合ってくれたら、女護ヶ島へ案内する。どうだ」
「女護ヶ島など、無いと言ったではないか」
「あるんだな、それが。吉原さ」
「それならおぬしがさっきも言ったであろう。だからこれから一人で参る」
「まあ、待ちねえ。吉原にゃ、仕来たりってもんがある。親爺さん、知っていなさるかね」
「知らぬとも誰かに聞けば良かろう」
「何言ってんだい。そんな事したら、虚仮にされるだけさ。親爺さん、元は侍だ。町人風情に馬鹿にされたいのかね」
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