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「段取り通り、処理に参りました。掃除屋でございます」
そう言って顔をあげた男の眼鏡がわずかな外光を反射して白く光った。
明石が息をついた。肩の力を抜いて、表情の強張りが解けていく。
「あ~、びっくりした。掃除屋さんだったのかぁ」
掃除屋と名乗った男は路地の奥へと歩き出した。声同様に淡々とした足取りだ。
「ひとりで?」
「いえ。じきに道具を持ったレッドとブルーがやってきます」
俺たちの前を通り過ぎて行く男を、明石の顔が追っていく。
「レッド? ブルー? それで呼び合ってるの?」
さきほどまでの緊張と警戒はかけらもない。
「お兄さんは何色なの?」
「仮に、掃除屋グリーンとお呼びください」
掃除屋は黒マスクの下でちいさく笑ったようだった。
「ひぃい! かっこいい! 城島、ぼくらもカラーで呼び合おうよ!」
「お前こげ茶色な」
「錆鉄御納戸色城島って呼ぶね」
グリーンは俺たちのそばで立ち止まると、肩を揺らして静かに笑っていた。
「仮に、肉塊の始末に困ったときには是非ご連絡ください。通常価格よりお安くさせていただきますよ」
路地に複数の静かな足音が響いた。
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