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倉庫街は街から離れていて、街灯もない。真夜中の闇がくまなく満ちている。俺たち以外に人気はないが、その暗闇のなかになにかが潜んでいるかも知れないと思うと、自然と周囲へ配る意識がいつも以上のものになる。 「わからん。けど昔からここは、そういう肝試しスポット満載なトコなんだよ」 とくに窓を見るたび、そこに人影がないか、誰か覗いたりしないか、せわしなく視線をめぐらせてしまう。つまり、天井からぶらさがった何かが揺れてないかとか、首に縄をかけた男が血走った眼を向けていないかとか、だ。 そわそわする俺に、明石がうわずった声で言ってくる。 「え、ちょっと。満載ってことは、ほかにもなにかあるってこと? 肝試しに行った何々くんが消えてからもう何十年、あそこには関わらないほうが良い……とかそういう話? 嫌だよぅ帰りたいよぅうえぇ」 「堪えろ。まだ仕事が終わってねぇんだ。それに」 進行方向右手に視線をむける。 明石も同じ方へ目を向けて、ため息のように白い息を吐いた。 「これから俺たちがすることって、そういうののネタを作るようなモンだろ」 扉に十二と書かれた倉庫。 これから俺たちは、人を殺す。 扉の鍵は事前に、仕事を仲介してくれた梶さんから渡されている。 「……あれ?」 鍵穴に差し込んで捻るが手ごたえがない。ためしにドアノブを回してみると鍵がかかっていなかった。     
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