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二階部分から階段を伝って、黒い液体が滴になってしたたり落ちてきていた。 「……血だ」 「どういうことだ。なんで、もう死体になってんだよ」 そこは物置に使われていたようだ。 段ボールや資材が積み上げられて、ブルーシートがかぶせられていた。そのシートも長い年月を経て埃が積もり、端々がほころんで劣化している。男の死体はブルーシートに埋もれるようにして投げ出してあった。両手両足は粘着テープで拘束され、口も目もテープで塞がれている。 胸を深く刺されていた。大量に流れ出した血液が、ブルーシートのうえを滑って階段まで広がっている。 「これって横取りありの、早い者勝ちだったのかよ」 「待って。まだ暖かい。この人、そんなに時間経ってないよ」 明石は死体をペンライトで周囲を照らしてそう言った。埃がきらきら舞っている。 俺は頭を掻き毟りながら、ふと、床に足跡がついていることに気が付いた。 積もった埃のうえに、来訪者の軌跡が記されている。すでに俺と明石の動きで上書きされてしまっているところもあるが、三つめの何者かの足跡を確認することができる。 そのとき、跳ね上がるように明石が動いた。 「後ろ!」 背後で冷気が密度を増した気がした。     
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