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反射的に横に飛ぶ。俺がいた位置をナイフが切り裂いていった。大ぶりなサバイバルナイフだ。銃を向けようとすると、空を切ったナイフが敵の手元で軽やかに反転。逆手に握られると、俺の喉元を狙ってきた。
明石のペンライトが俺を照らした。
まばゆさに目を細める俺同様、明順応を起こした敵の動きも止まった。
腕で目元を覆いつつ、照らし出された人影がもぞもぞと身動きしている。
「ありゃ。ミスったかな、これ」
軽薄さのにじむ男の声。どこか楽しんでいるような口調にも感じられた。
明石の銃口と言葉は、突然出現した敵へと向けられた。
「そうだね。そこにある棚のガラス戸に映り込んでなかったら、うまく殺せてたよ」
「あぁ~そっか~」
ライトと銃口を向けられたまま、男はわかりやすく肩を落としてみせた。
「知らない土地で仕事すると、こういうつまんないポカしちゃうから、巣穴から出て来るの嫌だったんだにゃ~」
気の抜ける口調だが、男のナイフは俺の喉元に突きつけられている。息が乱れそうになるのを意識的に整え、にじりよってくる恐怖を無視して、相手の動きを注視する。
「てゆか二対一なのね。俺さまくん、圧倒的超不利じゃん。すぱっと降参するから見逃して欲しいなーなんて」
わずか数ミリだが、男のナイフの刃が俺の首に近づいて来た。
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