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「俺さまくん、ダイヤルがちゃがちゃしてただけだもん。あ、見て見て! 札束! いまどき現ナマで入れちゃう? あ。USBもはいってるぅ。これ超絶見ちゃいけないデータでしょ絶対! すぐ見よ。いま見よ。うひひひ、楽しすぐる。超豊作じゃん、ウケる!」 「触らない! 中身をひっくり返さない! なにも面白くない!」 梶の怒号と、ばたばたとした物音があわただしく聞こえて来る。 俺と明石は顔を見合わせて、互いに嫌な汗をかいているのを確認した。心臓が嫌なリズムで高鳴っている。 「もしもし、あっくん。ハルです」 角のないやわらかな少年の声に、明石の表情がやや明るくなった。そこに唯一の救いを見つけたように、冷や汗だらけの顔にぎこちないながらも笑みが浮かぶ。 「か、梶さんはどうしちゃったのかな」 「いま最高にテンパってます」 電話の後ろが静かになった。ハルが移動してきたようだ。 「たぶん、しばらくは動けないかと。ケースの処理もですが、返り討ちにした人形の隠し場所を、隠した本人がよくわかっていないので、一緒に探しにいかないといけません」 人形、とは死体のことを指している。 電話越しにいるのは、少年の背格好をしているだけの、梶の秘書なのかも知れない。 「もろもろの段取りが整って解決のめどがついたころには、きっと梶さんの神経は限界まですり減っているので、それが回復してからになると思います」     
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