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「う、うん。こちらのことは、なにも、なんにも気にしないでいいから。梶さんが完全回復してからで良いからね」 明石が、せめてもの罪滅ぼしと言わんばかりに言葉を重ねて行く。 本当にそれしか言えない。俺たちにはそれしか言うことが出来ない。 「ごめんね、ごめんね」 もはや半泣きで明石がスマホに語り掛けている。 「いえ、こちらこそ土壇場で予定をキャンセルしてしまってすいませんでした」 ハルの声も言葉もしっかりとしていた。まるで普段の梶さんのようだった。 その対応がまた、逆に俺たちを追い込んでいく。 それから挨拶を交わして、通話を終えたスマホは、テーブルへと置かれた。最後まできちんとしたやりとりをしていたハルのその姿勢が、俺たちの困惑に良質な水とたっぷりの肥料をやっていった結果、すくすくと育たせてくれた。満開に花開いた罪悪感が高いところから俺たちを見下ろしてくる。俺たちはその根元で正座してうなだれている。 しばらくのあいだ、かろうじて呼吸をしている肉の塊になっていたが、「でも」と明石が呟いた。 「あのろくでなしさん、梶さんの知り合いだったのかなぁ」 「わからん。けど、あいつからまた別の誰かに渡った可能性も、なくはない気もする」 俺はコップの水を一息に飲み干した。 「ぼくはなんとなく、同じ人な気がするけどなぁ」     
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