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「どっかにいないかな。怖い人に追われて大変な目に会ってもいいよって人」
いるわけがない。
しかし、酸素不足気味の頭をなんとか回してみる。
「立候補者を見つけるのは無理だろうが、俺たちが推薦してやることは可能だな。つまり、おまえなんか日ごろの行い悪いから、怖い奴らに追いかけまわされてボコられても自業自得だろバカって人間をピックアップすればいいんだ」
「なんかわりとブーメランな気もするけど」
「もう一本裏路地に入るぞ。カツアゲだろうが人殺しだろうが見つけ次第、現行犯でパスする。ろくでなしに性別も年齢も関係ねぇ!」
「荷物ここに置いて、逃げたほうが早くない?」
突撃する勢いで狭い路地に飛び込んだ。
そこにひとりの男がいた。
飛び込んできた俺たちに驚くでもなく「ん?」と自然に顔をあげた。グレーのニット帽を被っていて、耳には重たそうなピアスがいくつもぶらさがっている。顔の大部分はマスクが覆っているが、俺たちをみて不思議そうにまばたきをする仕草にまだあどけなさが感じられる気がした。
彼の足元には人が倒れていた。身体の下から、赤黒い液体がじわじわと地面に広がっていく。ニット帽の青年の手には、血のついたサバイバルナイフが握られていた。
「いたー!」
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