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俺と明石の叫び声に、青年の肩がびくっと跳ねる。
「真昼間っから人気のない路地裏で人殺し!」
倒れたまま微動だにしない男を、明石が指さし確認。
「これは悪い!」
テンポ良く合いの手をかけながら、呆然としている青年を、俺が指さし確認。
「もしやあなたはろくでなし」
「えっ。なんで知ってんの!?」
明石の言葉に、青年は目をまんまるにして驚くような素振りをした。
足元で絶えている男のことも、自分が犯罪者であることも、そして現場を俺たちに見られたことも、そのどれもまったく気に留めていないようだった。犯罪現場にあって、それが日常の一部でしかないような自然体で青年はそこに立っている。
「あんたみたいな人を探していた。寸分たがわず相応しい!」
「俺さまくん、そんなすごいってこと?」
「すごすぎて寧ろすごいから、これを託す!」
俺たちは同時にかけだし、それぞれ男の左右を駆け抜けていく。俺はすれ違いざま、男にむかってジュラルミンケースを投げ渡した。相手は「なんじゃこりゃ?」と疑問形を口にしながらも、ナイフを手にしたまま、器用に受け止めてくれた。
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