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ブルーは黒いマスクを顎まで下げているが、それでも目元を隠すサングラスと目深にかぶったキャップが詳細を露わにさせない。
「雨、強いままだね」
明石がため息交じりに呟いた。雨脚が弱まらないと俺たちの足止めは続く。
雨音が囁き続ける店内に、ブルーの声がそっと投げかけられる。
「しばらく止みませんよ」
彼は携帯灰皿に灰を落とした。
「他愛のないおしゃべりでもして、時間を潰しませんか」
「どんなこと?」
顔をあげた明石の声に少しだけ明るさが戻っていた。
ブルーは手元の煙草に視線を落としているような仕草をして、
「例えばなんですけど、合コンとか行くことありますか」
「ぼくはないなぁ。城島は?」
「たまに。暇で暇で死にそうなときとか」
雨風によごれたサッシを背に、長椅子に座っているブルーと向かい合って立っている俺が答えると、相手の顔が俺に向けられた。
「そういう時って、仕事はなにをしているって答えますか。あるは、友達に聞かれたらどうしてます?」
ブルーは俺たちに交互に質問を投げて来た。
明石はひざをかかえたまま、前後にゆらゆら揺れている。
「そうなんだよね、正直に人殺してますって言ったらドン引きされちゃうから」
「それどころか通報されるわ」
「水産加工の工場で冷凍イカ詰めてますって言ってる」
「逆に食いつかれません?」
「なんでそれにしたんだよ」
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