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外の憂鬱な雨音が、俺たちのやりとりで遠のいていく。
「俺は質問とかされるとめんどくさいから、なにもしてないって言ってます」
「こういう仕事をしていると、意外なところで困ったりするんですよね」
「わかる。アンケートの職業欄とか」
煙草の煙を吐き出しながら、ブルーはうなだれるようにうつむいた。
「まえは普通のサラリーマンをしていたのですが。職業を尋ねられても、いまいちパンチがなくて。なんやかんやでこの仕事に着いたら今度は、強烈なパンチはあるけれど胸を張って言えないという難点が。とっておきがあるのに、披露出来ないもどかしさ」
ずいっと明石が身を乗り出した。
「実は昨日の夜、一仕事してきたんだって言ったら、めちゃくちゃびっくりさせられるだろうなって思うと、わくわくが止まらなくなるんだよね」
「めっちゃわかります、ホントそれ」
心なしかブルーの声が明るく弾んだ。口元も緩んでいる。
大丈夫か、こいつら。
「それと、野暮を承知で仕事の話なのですが」
大きな雨粒が窓を叩く。どこかでバタバタとトタン板に打ち付ける音も聞こえて来る。
冬の倉庫。当日の冷気が足元から這い上がって来るようだった。
「冬の倉庫の件、あれはどちらがやったんですか」
膝をかかえた明石が唇をもごもごさせている。
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