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ブルーはスマホを耳に当て、低い声でやりとりをはじめた。 「生憎、夢と希望のつまった胸を張れる仕事じゃないってのが残念だな」 掃除屋が声を押さえると、外の雨音がぐっと近づいて来た。 「夢と希望は見失いがちだけど、誇れない仕事だとはあんまり思わないかな」 明石は首を巡らして、背中のサッシを見上げた。大粒の雨が叩きつけて、滝のような雨水がガラスを流れていく。 「けど、人に言えない仕事じゃねえか」 「べつに言わなくてもいいじゃん」 めずらしく、なにかのタイミングが良かったのか、明石の言葉が素直にストンと胸に落ちた。俺はサッシに背中をもたせながら、「それもそうか」と鼻を鳴らす。人に言えるから良い仕事とか、言えないから悪い仕事っていうのも安直だよな。 「ぼくは、梶さんから依頼をもらって、準備して、仕事をして、終わって、報告して、また依頼をもらってっていう、サイクルというかつながりというか、そのあたりがちゃんと無理なく動いていたら、平常運転で生きているなって思えて、安心して息が出来るようになる気がするんだ。なにかとつながっていて、そこでちゃんと生きているって確認する作業がぼくにとっては仕事なのかも知れない。まぁ、わりと楽しいから、夢と希望も実はあるかも」     
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