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手の中の鍵が鳴った。 番号が書かれた白いプレートについた、小さな鍵だ。俺はコインロッカーの前にたち、プレートに書かれた番号と同じ数字をさがす。消えかけた文字同様に、何十年と言う年期と放置を感じさせる塗装の剥がれや錆の目立つコインロッカーだった。 人通りの多い通りから一本小道にはいった場所だ。通りを行きかう人々の喧騒が聞こえて来るが、違法に建て増しされた建築物が道を狭めている路地では、笑い声さえ怪しく響く。無計画に上へ伸びていく家屋のせいで、青空が狭い。さらには張り巡らされた電線が何本も無粋に横切っている。 至る所から、調味料と料理の香りが漂ってくる。隙間のようなところや、雑多な物置のようなところが、ぼろ布のようなのれんをだしている。どれも油と埃でぎとぎとで、何て書いてあるのかすらわからない。 怪しげな店と人間が潜んでいる、狭い路地に、このコインロッカーはあった。 「ぼくのはこれ」 そう言って、明石は鍵穴に差し込んだ。 それぞれの扉から荷物を取り出す。 まったく同じ形、サイズのジュラルミンケースだった。     
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