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そう言いながらスマホをとりだし、
「ほら、なにもないのに芸人さんの口上を口ずさんでたら、そんなに好きなの?ってなるけど、普通に音楽とかだったら口に出してもご機嫌だな、ぐらいで済むじゃん?」
俺は懐疑的に表情をゆがめて唸った。
明石はスマホを操作して、「とりあえず、これとかどう?」と画面を見せて来た。
男がひとり。黄色い帽子に青いポロシャツ姿だ。手にインスタントラーメンを持っているが、なにかを落とした。軽快な音楽が鳴り出して、男が身体でリズムを取り始める。なんだ? なにがはじまる? 男が落としたのは割りばしだった。
映像の男と同じタイミングで明石が言った。
「あしもとにお手元~」
「ブッ! バッッッ! どぅわっっあぁあ!」
思わずのけ反る。ソファが揺れる。足が跳ね上がって膝をテーブルにぶつけた。変な叫びが飛び出してしまった。咄嗟に口を手で覆い、店内を見回す。幸いにも誰もこちらに注目はしていなかった。動機が激しくなっていた。首元あたりに熱が昇って来るのを感じながら、机に突っ伏した。
「……わりと城島の笑いのツボはがばがばなんだよなぁ」
「てめぇ、爆弾処理するのにさらに高威力の爆弾投げて来るやつがあるか」
「ほらほら、胸元にお手元~」
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