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晩飯にアニキも合流して久しぶりの一家団欒になった。アニキは俺と一緒の三白眼。彼女と暮らしているけれど、まだ結婚していない。事実婚にこだわっているらしく、籍はいれていない。兄貴曰く「世間の『同棲』と一緒にしないでくれ!」ってことなんだけど…正直どうでもいい、俺的には。
「そんで、さとしはコウと帰ってきたわけ?」
「へ?」
「相変わらず、かわいいわ~こーちゃん」
アニキは薄々俺の性癖を感じとっている…と思う。コウタロウのこと疑ってないといいけどな。コウタロウは本気でアニキを兄と慕っているしね。かあちゃんは能天気にカワイイを連発してるけど。
「かあさん、これ、既製品だろ?」
うわ、アニキ、そんなこと言わなくても!
「そうよ~だってお父さんが、これでいいっていったの」
ん?なに?
「父さん、いいってなにが?」
アニキがたたみこむ。
「ん~、いいじゃないか、無理だっていうものはさ」
無口な父ちゃんが口を開いた。無理?なにが?
「私ね、料理がほんと苦手で、最初頑張って作ったのよ。でもね、まずいものしかできなくて。そしたらお父さんが、既製品を使えばいいじゃないかって。だから甘えて既製品なの」
母ちゃん、堂々の宣言。
世の中に沢山の種類の食べものがあることや、家庭の味ってものがあるらしいとか、俺は最近知った。だって松田の作ってくれた味噌汁のほうが永谷園より旨い!まちがいない。(コウタロウのほうがさらに旨いけどね~♪)
ゲンナリした兄貴。
「聡。やっぱりさ、胃袋を釣られたいよな」
うわ、そんなこと言わないでくれる?俺コウタロウに餌付けされてる!むしろ望んで!
「ど、どうなのかな」
兄貴の何か言いたげなニンマリ顔を無視する。俺は思いをはせた。隣のコウタロウ家の食事はさぞかし旨かろう……と。
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