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シャワーをあびてややスッキリして居間に戻ったら、コウタロウはまだ帰っていなかった。コウタロウと一緒にいるのは好きだけど、母ちゃんや家族の前でコウタロウに会うのは嫌だ。なんか裸にされた気分になる。
「さとし、今晩こーちゃんがアンタを招待してくれるって」
「へ?」
招待ってなに?
「僕と母さんでご飯つくるんだよ。さとちゃん来てね」
さぞかし旨かろう。ビンのスキヤキより旨かろう!でもさ、コウタロウの家に俺がいくわけ?真琴さんの前でコウタロウと一緒に?無理!無理!
コウタロウを汚したと思って、そのことをクヨクヨしていた自分が蘇る。記憶がなかったことやあんなこと、こんなこと。
俺さえいなければ、コウタロウは彼女を紹介したりね、普通の団欒できたかもしれないのに。それなのに、真琴さんの前に?一緒にご飯食べる?
無理だ。
「コウタロウ、俺は遠慮するよ」
俺の声がか細かったのか、悲壮感が滲みすぎていたせいで重たい雰囲気になってしまった。
「あら、予定あるのかい?」
母ちゃんの問いは俺を救ってくれない。だって、だって。一人息子なんだぞ、コウタロウは。俺と違って!
コウタロウは頬づえをついたまま、のんびり言った。
「うん、そう言うと思ったんだ。でも来てもらわないと困るんだよ僕が」
なんでコウタロウが困るんだ?意味がわかんない。
「ということで、あんたのご飯はつくらないよ。今日はお父さんとデートだし」
母ちゃんがおやじとデート?
「同じく既製品を食べるのなら、外食しても一緒じゃないか?って父さんが言ってくれてね。あんたがいなくなってから、大概外食なのよ」
「それ、デートじゃないだろ」
「子供がいなくなったんだから、お互いむきあわないとね。そういうことだから、お言葉に甘えさせていただくわ。こーちゃん連れて行ってよ」
そうして俺はコウタロウに連れられて隣の家にいる。だって、俺コウタロウに逆らえないし。逆らいたくないし、そんなの嫌だし。どんだけ、こいつの事好きなんだよ……ふうう。
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