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「おまたせ~~」
真琴さんの声とともにテーブルに呼ばれる。実にうまそうなものが皿にのっている!俺の大好物のコロッケだ!ポテトサラダもある。
「ごめんね、お芋ばっかりで」
「いえ、なにをおっしゃいます、真琴さん。芋じゃないです、これはポテトです!」
だってさ、芋がこんなデリシャスな装いになったら芋じゃないよね~
「いっただきます!」
さっきまでグズグズ悩んでいたけれど、喰い物が目の前にくれば話は別!箸でコロッケを掴むとサクって音がしたぁぁぁぁ。噛む前にサクってことは旨い、これ決まりです。パクリと一口。うお、なんだ、なんだ、この旨みは、甘辛で懐かしい味がするぅぅぅぅ。
「真琴さん、めちゃめちゃ美味しい!」
相当うっとりした顔だったらしい。真琴さんが笑いながら言う。
「昨日肉じゃがだったのよ。そのおだしごと芋やニンジンを潰してコロッケにすると美味しいのよ、こんなので喜んでもらうと申し訳ないわ」
残りものがこんなことに!リメイクまで流石すぎる!
「なんだかほっとする味です」
母ちゃんのビンのスキヤキもそれなりだけど、なんかホットする、こういうの。コウタロウが作ってくれた中華粥もそうだった、ホットするのになんだかちょっと悲しくなる。
それって自分が、弱ってるってことなのかな、いや違う。後ろめたいんだ、きっと。
ポテトサラダも旨かった。カリカリのちっこいベーコンとクルミがはいってた。そんなポテトサラダ食べたことなかったからビックリ。キュウリもニンジンも辛い玉ねぎもリンゴも入ってなかった。もちろんミカンの缶づめ、真っ赤なサクランボも。
土鍋で炊かれた炊込みごはんもすこぶる旨かった。何もかもが美味しくて、全部悲しくなった。俺に用意されたご飯は、コウタロウが作ってくれるものと一緒で、体に良さそうで、優しい味がして、本当に美味しい。
俺は好きになった相手と、それをとりまく人達を不幸せにしているような、そんな思いが湧き上がってきて、とっても悲しくなった。
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