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「さとちゃんは悪くないわ。悪いのはコウタロウ。あんた男として最低よ。外堀を埋めようとしたのか知らないけれど、私は外堀にも何もなりはしない。本丸を納得させないで、どうするの?私はさとちゃんと同じ気持ちよ。ものすごく居心地が悪い」
俺はここにいちゃいけない。帰る、隣の自分の家に。
「なんだかすいません真琴さん。これは俺のせいなんです…それ以上は言えないけど。それに…俺はそんな気はないし、あのごちそうさまでした。ホントに美味しかった……です」
椅子から立ち上がって逃げるようにして玄関に向かう。もうたくさんだ、明日札幌に帰ろう。松田と飲もう。そしたらきっと俺に戻れる。
「さと!」
後ろかコウタロウの声がするけど俺は振り向かない。
「困らせるつもりじゃなかったんだよ。さと!」
困っていないよ。ただね、俺、自分が嫌なんだ。なんでコウタロウのことになると、こう何でも複雑になるんだ?
「困ったわけじゃない、なんだかさ、ズレてるよ俺達。眼鏡を連れ込んだ時と同じだね。コウタロウって自分で決めて実行するよね。なんか俺、こっちに帰ってきて実はまいってる、すごく。そんで、またあの時みたいに、弱ってる」
俺はそれしか言えなくて、玄関をでた。追って来る足音は無い……あの時と一緒。
俺は誰もいない一軒家に戻って、自分の部屋のベッドに丸くなる。誰もこの家にいなくてよかった。
なんでコウタロウはああやって、自分で決めて俺に何も言わないんだろ。言ってくれれば七転八倒しながら俺だって考えるのに。俺って考えない人間にみえるのか?
傍にコウタロウがいなくて良かった。そんな風に思う自分が嫌だった。
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