相談役―ジジイ松田

3/4
前へ
/49ページ
次へ
「さてと、で?サトシくん?」  松田の家でビールを飲みながら床に座っている。ビールは俺が買った。だってさ、迷惑料だろ?松田がふんぞり返って俺に聞く。 「で~~だ、お前一緒に住むというのが嫌なのか?事前に相談されなかったのが嫌だったのか?」 「どっちも。っていうかコウタロウは口が軽すぎじゃない?」  松田はふふんと笑って言った。 「俺は相談役だからな。情報が集まることになっているのだよ。 それで?一緒に住むにはやぶさかじゃないけど、知らない所で話が進むのはどうなの?ってことかな?サトシは」 「まんまコウタロウに言ってくれよ」 「ふん、お前が釘をささなきゃ、村井はめげないさ」 「コウタロウは今度、松田になんて言ってきたんだよ」  松田は可笑しそうに笑みを浮かべて俺を見る。 「『また、さとちゃんを怒らせた。どこにもいかないように見張ってって』だとさ。あのさ、これを言われたい~~って女子がシコタマいるのに、なんでサトシなんだろって、あらためて考えちゃったわ」  いつもの俺なら顔も赤くなるが今は違う。 「あのさ」 「なんだよ、あらたまって」 「なんでさ、そういうことを松田に言えるのに、コウタロウは俺に言わないわけ?」 「え?」 「だってさ、俺はどこにもいかないよ?そんなにどこかに行きそうに見える?コウタロウがいるのにさあ、他の男でも女でも、そっちにいきそう?」 「サトシが女はないわな」 「だから!」 「そんなこと、わかってる。短いけどお前とはちゃんとつきあってんだ、俺は。さとしは今まで関わった相手が自分と違う相手と寝てたとしてだ、それに対してどう思った?」  どう?どう思ったか? 「何も思わなかった。そんなもんでしょ?な感じ」 「だろ?でだ。村井がメガネ男子に襲われたと思って我を忘れただろ、お前は」  結構それ思い出したくない。俺にとってはトラウマっぽい事件だ。 「それがお前にとっての村井の存在だ。それぐらいお前は村井が好きなんだよ。でも相手はそれを信じていない。「俺の方が好きだ」そう思っているよ、村井はね」 「そ、そんなこと秤もないのに、わからんじゃないか」 「だからこそさ、村井は自分の気持ちにサトシは追いつかないと思いこんでいる」  なんだよ、その「思い込み」って。勝手に答えをださないで俺に聞けばいいのにさ、コウタロウのバカ!
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加