相談役―ジジイ松田

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「追いつくとか、追いつかないとか、そういうものなのかな。それにさ、自分が弱っちくなっているような気がして嫌なんだよ」 「そんなもんだろ?弱くなったりするもんだ」 「松田も?」 「誰でもだろ。まあ、強くもあり弱くもある。違うな……」  松田はちょっと黙った。誰でもそうなのか?良く考えたら相手を思って毎日を過ごすなんて俺初めてだったりするから。 「自分のことがよく見えるようになる。だから弱く感じるのかもな。それなのに相手の事は見えなくなる。だから相手の言葉や行動に一喜一憂するのかもしれん。よく考えたらおかしな話だ」 「お前、すごいな!前から思ってたけど。やっぱりジジイのようだ」  松田の言ったことは本当にそのとおりだった。自分のこと、俺の場合相手が同性なこと、家族のこと。今まで見えていなかったこを考えている自分がいる。そしてコウタロウのことは見えない。傍にいるのに足りない。コウタロウは乾いてカラカラだって言ってたっけ。 「まあ、グダグダいってもだ、世界中の人間の100%が恋愛するもんだろ?100%じゃないかもしれないけど、100%に近いだろうしさ。それだけ皆してるんだから俺達だってできるんだと考えれば気が楽にならないか? わからないことは村井に聞けばいいさ。悩むより楽だろ?言葉があるんだしさ」  何をグズグズしてたんだろ、俺。おまけに帰ってきちゃったし。あ!ああああ! 「うわ!ヤバ!帰るって言わないで帰ってきちゃった。母ちゃんに何にも言ってない!」 「はぁ?サトシ、お前どんだけ抜けてるんだよ」  松田がゲラゲラ笑いだした。なんだかいつもの空気に戻ったみたいな、そんな瞬間。 「家に電話しろよ!」  松田が必死に笑いを止めようとしながら言うから、俺は母ちゃんに電話した。母ちゃんには散々怒られた。帰るにしろ何にしろ、なんなの、アンタの行動は!と。まあ当然だな。  5分ばかり文句を言ったら気がすんだらしく(今の俺にそのメンタルをくれ!)俺の荷物はコウタロウが取りに来たから預けたとのこと。相変わらず用意のいいことで、コウタロウ君。  コウタロウが戻るのはいつなのかな。たぶん連絡がくるだろう。いや俺が聞くべきかな?明日考えよっと。 「サトシ、お好み焼きする買い出し行こうぜ!」 「ほ~い」  今日はお好み焼き食べて酒飲んで、大事なことは明日!明日考える
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