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「どういう意味?さと」
「どういう意味もこういう意味もないよ!俺がどんな気分で実家に帰ったと思う?帰ったあとどんなに居心地悪かったかわかる?おまけにあんなこと真琴さんの前で言われてさ!俺にどうしてほしいのか何で最初に言わないんだよ。一緒に住みたいって言ってくれればさ、俺だって一生懸命考えたわけじゃん?だけどさ、何も言ってくれなくてってことはだよ?一緒に住んで見張ってないと、俺がどっかにフラフラしそうだと、そう思ってるんじゃない?たしかに以前の俺はそうだったけど、今一生懸命自分なりにコウタロウに向き合ってるつもりなのに。俺だけバカみたいじゃない?」
本当はもう少しちゃんと言うつもりだったのに、口をひらいたら考えることができなくなってそのまま言うことになってしまった。
「一緒にいたいんだよ、それに見張っていたい。これは正直な気持ちだよ。さとは今まで僕のことなんか知らないで、違う相手と一緒にいた。僕の腕の中にいるさとちゃんを知っちゃったんだよ!知らなかった頃なら対処できたけど、もう無理なの!どこかに行く前に縛りつけたくなる。でもそれは嫌だって言われそうだ。嫌ってことは僕のことを本当は好きじゃないのかもって考えちゃうんだよ!じゃあ、せめて顔を毎日みて、ご飯を作って、笑っているさとちゃんを見てたら、安心できるかもって。そんな単純な思いつきだったけど、思いついたら実行したくなって。でも言ったら嫌がられそうで、その堂々巡り。だからあんな風に切り出した。結果は悪いほうに転ぶってわかってたけど、何もしないよりは前に進めると思ったんだよ!」
「じゃあ、なんで最初に俺に言わないんだよ!おかしくないか?」
「じゃあ、なんでこんなに僕を不安にさせるんだよ!」
子どものころから一回も喧嘩をしたことのないのに……悲しいよ。俺はズルズルと床に沈みながら独り言のように呟いた。
「一緒にいたいって思う気持ちが沢山ありすぎると、喧嘩になるっておかしくない?一緒にいるために喧嘩がいるの?俺コウタロウと喧嘩するの嫌だよ。ものすごく悲しい」
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