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「なんだか楽しそうですね。あっくんとジョージさん」 丸みのある声をかけられ、俺たちはそれぞれ顔をあげた。 テーブルのそばに立っていたのは、ハルだった。ひざ丈のカーディガンの裾が揺れている。首元にヒョウ柄のストールを巻いた少年が、くもりのない真っ直ぐな眼差しで俺たちを見下ろしている。 「なんだ、ひとりか?」 ハルの後ろにも、店内にも、梶さんの姿はない。 「はい。来客用のお菓子を買ってくるように頼まれたんです」 よくよく見ると今日の少年は、いつものぬいぐるみのような耳と尾っぽのついたカバンを背負っていなかった。身軽な格好で、手には数枚の千円札がはいった保存袋を握りしめている。 「丁度いま、作ってる最中なので少し待ってって」 そう言うとハルは、小柄な身体を滑り込ませるように俺のとなりに腰を下ろした。 「城島のイヤーワームに餌をやってたんだよ」 へらへらと緩い表情で明石がこれまでのくだりを説明した。 「そういうのない?」 明石が対面から投げて来る質問にハルは、 「ぼくより、梶さんのほうが飼ってると思います」 明るく、はきはきとそう答えた。     
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