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喫茶店マダム・ストロベリーの扉を押し開けると、軽やかで優しいベルが鳴り響く。 マスターは丁度、一番奥のソファ席のところにいた。テーブルに置いた猫のぬいぐるみに、予約席のプレートをかけているところだった。 「!」 振り返ったマスターが、俺を見て、目を丸くした。 まるで幽霊にでもなった気分だった。憮然としながら唇を尖らせる。 「俺だってたまには早く来ますよ」 誤魔化し笑いをしているマスターに、メロンクリームソーダを注文する。 おしぼりをいじりながら、何気なく店内を見回した。 平日の昼下がりだ。三人組の女性の笑い声がときおり聞こえて来る。会話の内容や笑ったときのシワの感じから、五十代ぐらいか。近くの席ではスーツ姿の中年サラリーマンが、書類を広げてコーヒーを飲んでいる。 カウンター前の丸テーブルには、二人組の男が着いていた。 イスに座っていても、どちらも長身なのがわかる。長い足を折りたたんでテーブルの下で窮屈そうだ。     
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