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ひとりは静かに本を読んでいる。耳が隠れるほどの黒髪にウェーブのかかった髪形をして、紺色のジャケットを着ている。手元の文庫に視線を落としている横顔は、すっと通った高い鼻筋と余計な肉のついていない頬から、明晰さを感じさせる。スタイルのいい長い足を行儀よくテーブルの下に納めている。 もう一方は、ライオンの鬣のような金髪の男だった。眉が短く、目つきが鋭い。視線が合えば襲い掛かって来そうな、獰猛な印象を受ける。迷彩柄のパーカーを着て、クラッシュデニムの足を大きく広げて、通路に投げ出していた。 落ち着きなく身じろぎしながら、カウンターのなかを興味深そうにのぞき込んでいた。 明らかにこの店内に置いて、異彩を放っている二人組だった。 つながりのわからない二人組だ。まるでわかりやすい静と動。風貌も服装も印象も対極。 マスターがカウンターから出て来た。 トレイには、輝かんばかりのエメラルドグリーンを誇るメロンクリームソーダが乗せられている。四角い氷が優雅に浮かび、白いバニライスのうえに乗るさくらんぼの色彩が映える。グラスについた水滴でさえ、そのひとつひとつが宝石のように輝いていた。 すると金髪の男は通路に出していた足をさっと引っ込めた。かたわらを通り過ぎて行くメロンクリームソーダをじっと眺めると、 「なぁなぁ」 身を乗り出して、本を読んでいる男へと話かけた。     
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