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メロンクリームソーダは無事に俺の前にやってきた。バニラアイスの甘い香りがそっと鼻をくすぐる。マスターの身体越しに男の無邪気な声が聞こえて来た。
「メロンクリームソーダって名前、おかしいと思わねぇか?」
俺はストローの外装を破りながら、ひそかに耳を傾ける。
「だってメロンソーダにクリームがはいってるんだぜ。メロンソーダクリームになるだろ、ふつう」
金髪の男はイスに座りなおしながら憮然と言った。テーブルに頬杖をついて、納得いかないと言わんばかりに眉間にシワを寄せている。
相手の男は本に視線を落としたままだった。おもむろにコーヒーカップに手を伸ばす。一口含んで、ソーサーに戻すときにようやく、口を開いた。
「どうでもいい」
顔をあげることなく、静かに言い捨てた。
俺はメロンソーダをストローですすりながら、離れた席からなりゆきを伺う。
「だってよ」
金髪の男は構わず話を続ける。
「クリームは、なにを考えてわざわざメロンとソーダのあいだに割って入ったんだ?って話だぜ。そこしかなかったか? あいだだぜ、あいだ。ちょっとごめんなさいよっつってねじ込まなくても、前か後ろにつけば良かったんじゃねぇか。なぁ」
そしてフンと鼻を鳴らして、
「なにを考えてんだか、わかんねぇぜ」
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