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「ふーん。じゃあ、こういう風にされたかったんだ」
夏樹の優しく背中を撫でていた手が、ぐいと顎にかけられて強引に上げさせられた。あっ、と思わず声を上げて、噛付くように唇をさらわれてぞくりと背筋に電気が走る。舌の根が痛いくらいに強く吸いあげられ、咥内を蹂躙された。
「はぅっ……んっ、うっ……夏、な……んっぁ」
不意を突かれて漏れた浩史の声に、夏樹の雄の本能が目を覚ましだす。たくし上げられたシャツに手をしのばせ、まだ兆しの無い柔らかい乳首を抓った。
「ひっ、ぃった……い、痛……」
びくんと痛みで体を反応させて、思わず夏樹の胸に両手を当てて押し返す。そのくらいでは引き離すことが出来ないと分かっていながらの抵抗である。
「んー、でもCDの中のお前は、もっとしてって言ってたよな」
こっちも奥まで欲しいと言ってたじゃないか、とウェストから忍び込んだ夏樹の手が、素肌の尻を掴んだ。意地悪く乱暴に揉みながら、徐々にその指が秘部へと近づくが、触れてこようとしないもどかしさに、思わず浩史は体をずらした。
「や、だ……夏樹。触るなら、ちゃんと、触って……」
赤くなった頬で浩史から近づいてその首に両腕を回し、互いの唾液で濡れ光る唇に再び吸い付いた。ね、と首をかしげるような仕草は、浩史の作為的な思惑が見え隠れする。
「本当にもう、そういうところずるいよな、お前」
そんなことを言いながらも、その要求に応えてしまうのは単純なことだ。
そこに愛があるから、である。
「だって、夏樹のこと、好きなんだもん」
リビングの固い床であっても、二人で横になればどこでも薔薇色の花が咲くのだ。例えその尻の下で、CDケースがぱりんと不吉な音を立てたとしても。
「あ……」
「あ……」
ハミングするように重なった声の後に、軽やかな笑い声がこだまする。そして、ふざけるように抱き合って、気持ちを体で確かめるべく、寝室へと場所を変えるのであった。
【Fin】
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