告解

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 それからはご存知のとおり、私は全ての罪を認め一切の弁明をやめました。多重人格そのものについては否定しませんでしたが、これをもって無罪とするという主張は取り下げました。どの人格のやったことにせよ、全ては自分の責任として認め、被害者の皆様とそのご遺族の皆様に謝罪し、早く死刑判決を確定させてほしいという意思を表明したのです。当然、みんな驚きましたけどね。必死に無罪を主張してきた被告人が、公判中に一転して有罪を認めたんですから。弁護士の先生にも申し訳無いことをしました。  でも、もはや私の信念は決まってしまって、ゆるぎませんでした。そして控訴審でも死刑判決が維持され、私はそのまま上告を見送って死刑が確定しました。後はひたすら、被害者様とご遺族様への謝罪を行い、そして一日も早い死刑執行を望みながら毎日を過ごしてきました。そして今日やっとその日を迎えることが出来たというわけです。  ぼちぼち時間が来たようですね。これにて現世にはお別れです。最後に改めて御礼を言わせて下さい。本当に、あの時の先生のお言葉が無ければ、未だに最高裁で争っていたと思います。先生のお言葉が、全てを変えてくれました。こうして穏やかな気持ちで絞首台に昇ることが出来るのも、本当に先生のおかげです。有難うございました。どうぞ先生もお元気で。  はい? 先生からも最後に一言ご確認? 今、本当に一点の曇りも無い気持ちで死刑執行を受け入れているか、ですって……? それは勿論ですよ。先ほどから繰り返しているとおり、私は心から死刑を望んでいましたし、今の自分は本当に何の迷いも無い、晴れやかな気持ちなんです。何故、今更お疑いになるのでしょうか……何故?  …………  …………     
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