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普通のタレント並みに表へ出る為、顔も広く知られている。深くかぶった帽子と気持ちほどの小さなサングラスに、思わず吹き出しそうになった。
「いいって。それより、なんでここなわけ? 俺んちに直でくればいいじゃん」
浩史の向かいに腰を下ろして足を組んだ。ごめん、と言いながら、彼も座りなおしテーブルの前で細く白い指を重ねた。ここに来るのは浩史の呼び出しのときだけで、なぜかこの場所を指定してくる。
「あ、あの……じゃあ、お言葉に甘えて、夏樹の部屋、行っていい?」
帽子の庇から大きな黒い瞳が、上目遣いにこちらを見た。アーモンド形の形の良い瞳とそれを囲う睫毛もまるで人形みたいだ。
下にずれたサングラスからは完全に出ていて、変装もなにもあったものではない。こんなところで話していて、見つかってしまえば身動きが取れなくなってしまう。
「最初から来ればいいじゃねーの?」
本当は呼び出されるの事も嫌ではない。家にきてくれる方が嬉しい事は嬉しいが、こうして秘密の逢瀬をしているという、いかにもな感覚が好きなのだ。
「う、うん……」
撫で肩の浩史の肩が一層下がり、シュンとうつむいた感じは、叱られた小型犬のようで抱きしめたくなる。
「ほら、行くぞ」
「あっ……う、うんっ」
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