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今年の夏は稀にみる猛暑となり、人々は汗だくのまま冷房車両へ乗り込む。
スーツを着込んだサラリーマン、作業着の職人達、白いブラウスを腕まくりした女子高生、皆涼しい環境に安堵の表情を示す。おそろしい寒暖差に、体の弱い私はすぐに気持ちが悪くなってしまうのだが。
とにかく猛烈な暑さは今週いっぱい続くとのこと。オフィスも冷房をフル活用しているため、外回りの人間にとっては至極快適なのだろうが、内勤のわたしにとっては寒くて仕方がない。カーディガンを羽織ってやりすごすしかない。よくみると、今着ている紫色のカーディガンに穴があいている。虫にでも食われたのだろうか。補強するほど愛着もないので帰りに駅内のゴミ箱にでも捨ててしまおうと思う。
熱中症など、何かと弊害をもつ夏という季節は、実は嫌いではない。寧ろ四季の中で一番好きなのではないだろうか。理由はおそらく「生」が感じられるから。草木も昆虫も、鳥も、花も、皆りっぱに生きていることが目に見えてわかる。コンクリートの隙間からひょっこり出てきた日日草なんて生命力の塊だ。いつも「死にたい」と言っている自分を悔い改め、私もこの子のように頑張れればいいんだけど・・・圧倒的な生命力に感動するばかりで、やっぱり自分はなかなか変われない。
せめて親しくなろうと、私は日日草に話しかけ始めた。
「おはよう」「おやすみなさい」「いってきます」「ただいま」
この日日草と友達になれたら、私にも強く生きることを教えてくれるのだろうか。
傍からみればとても変だが、私は最近、割と真剣に話しかけている。
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