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(やけに眠い。昨日は飲みすぎてしまった)
舜は冷たいシャワーを浴びながら、顔をごしごしと力を込めて洗った。昨日は先輩社員の退職送別会で、朝の3時まで飲み続けたのだ。睡眠時間2時間半、眠くて当然だ。生まれつきアルコールに強い体質なのか、幸いどんなに深酒しても二日酔いに悩まされることは無い。翌日の午前中は、ほろ酔い気分で普通に仕事ができる。そして、夕方になったら元気を回復して、仕事が終ればいざ出陣だ。
鏡の中から、しまらない顔つきの舜が見返している。舜は鏡を睨み付けた。
「おい、しっかりせんか!」
鏡の舜も睨み返してくる。
(まあ、いいか)
クリーニング袋を破り、純白のワイシャツを取り出す。ハンガーにぶらさげた中から、適当に選んだ縞(しま)のネクタイを締め、ベッドの周りに脱ぎ散らした背広を身に着けた。ズボンが皺に成っている。
(まあ、いいか)
「行って来まあす!」
舜は、誰もいない部屋に元気よく声をかけた。
8時10分、博多駅前の会社に到着した。舜が勤務するのは建設会社なので朝が早い。管理部門だから8時45分始業だが、現場は8時開始だ。
(よろしい、今日も経理部一番乗りだ。職場には、いつも始業30分前に着くようにして
いる。若手部員として当然の心得だ)
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