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後ろから現れたこの三年生は、写真部の部長でもある村上夏弥。ひょろっとした体格で、身長は周りの男子よりは高い方である。髪も少しパーマがかかったショートカット。このパーマが雑誌で見かけるモデルのようなオシャレな髪型をしているから、新入生の頃は先生によく注意されていた。千鶴も前に聞いたことがあるが、どうやらこれは天然パーマらしい。のちに、成績や出席態度において優秀と分かるにつれ咎める者はいなくなった。所謂、優等生だった。
「そんな驚かないでよ」
フフッと優しく微笑むこの顔が、千鶴は好きだった。
「急に出てこないでくださいよ! びっくりしたじゃないですか!」
「僕はずっと後ろにいたよ? 香川が気づかなかっただけで」
「え! 声かけてくださいよお・・・」
撮影をしだすと、周りが見えなく没頭してしまうのが千鶴の良いところでもあり悪いところでもあった。夏弥はそれを知っていた。
「集中してるときに悪いかなと。後輩を見守るのも部長の役目、ってね」
「先輩、今日は撮影しないんですか?」
「うん。よく分かったね」
「今日は眼鏡してるから。先輩、撮影の日はコンタクトにしてるでしょう?」
「そう。変えてるのバレてたんだ。」
そりゃ先輩の姿をいつも見てますから、と答えたかったが、変に思われても困ると思い、千鶴は開けた口を紡ぐった。
「あ、よかったら写真見てくれませんか?」
「うん、いいよ」
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