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夏弥は眼鏡を掛け直し、じゃあね、と去っていった。千鶴は夏弥の後ろ姿を見つめることしかできなかった。いつもよりも鼓動が早くなったのが分かった。何を考えたらいいのか、何から理解したら良いのか、何が何を何したら、何何何と頭の中で渦巻く「何」は考えれば考えるほど増えるばかりで途方にくれた。カシャ、とシャッターだけを押してしまった写真には、紫陽花の生え際と花壇の縁がピンボケし、ブレていた。まるで千鶴の心を写しているようだった。
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