紫陽花ファインダー

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 放課後、千鶴は教室にいた。いつもなら、校庭や近所の公園などの外に出て撮影をしているのだが、今日は撮影する気になれず、昨日撮った紫陽花の写真をモニター越しにずっと眺めていた。夏弥の撮った一枚を眺めては、昨日の一連を思い出し悶絶していた。  ーー俺のことも見てね。伊達眼鏡なんかに騙されちゃ・・・ ガタン!と手からカメラが離れた。幸いにも、カメラを机の上で傾けて見ていたからカメラに損傷はなかった。千鶴は今になって夏弥の一人称が「俺」だったことに気づいた。眼鏡をかけられ、目の前に夏弥の顔がきて、しかも伊達眼鏡だったことで頭がいっぱいだったためか、一人称が変わっていたことに今まで気づかなかった。 「俺・・・って・・・」  優等生で優しくて後輩思い。そしてカメラを構える姿はとてもかっこよく、写真は息を呑むほど素敵。いつも「僕」で物腰柔らかい夏弥が「俺」と使ったのは千鶴にとって衝撃的だった。その一言だけなのに、千鶴の中の夏弥が崩れていくような気がした。けれど、胸の高鳴りは鳴り止まない。  ガラッと教室が開く。 「あれ。ちーじゃん」  生徒会室帰りの鈴が入ってきた。忘れ物を取りに戻ってきたらしい。 「ちー、部活は?」 「うん、今日はちょっと気分が乗らなくて。」 「・・・ちーが部活行かないなんて。朝からなんか魂抜けてたし、なんかあった?」     
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