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8時15分着。よろしい、今日も経理部一番乗りだ。職場には始業30分前に着くようにしている。若手部員として当然の心得だ。
(ん? 応接室のドアが開いている。こんなに早く誰が来たのだろう)
舜が部屋の中を覗き込むと、
「あ、内藤さん、お早うございます!」
水盤を手にして、片笑窪が微笑んでいる。舜の心臓が天井まで跳ね上がった。
(落ち着いて、落ち着いて)
舜は必死に自分に言い聞かせた。
「あ、原さん、お早うございます。そやけど、こげな朝早(は)よから、何(な)んばしようと?」
「応接机に、お花を活(い)けたんです。今日から、私の当番なんです」
「あ、そうね」
(凄い。真奈美ちゃんが俺の名前を憶えていてくれた)
3ポイントリード。
(黒木との作戦会議が、これほど早く実行できるとは)
「あー、あのね、原さん。僕の同期に営業部の黒木て言う変な奴が、おるっちゃけど」
「はい?」
「黒木の奴、原さんと僕と三人で、飲みに行きたかねえ、って言いようったい。あつかましか奴やろう?」
「わ、本当ですか?嬉しい。今週は、総務の青木さんとか、井上さんからもお誘いを受けてますので、来週にお願いしてもよろしいですか?」
真奈美ちゃんの笑顔がはじけた。
(青木さんに井上だって?同じ部署に働いている弱みを利用して、真奈美ちゃんに無理強(じ)いするとは、とんでもない奴らだ。うかうかしてはいられない。青びょうたんの井上はともかく、青木さんは、有名な女たらしだ)
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