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「真奈美ちゃん、現在(いま)付き合っとう彼氏とか、居(お)ると?」  黒木が、いきなり確信に突入した。デリカシーの無い奴だ。  居酒屋チェーンの〈村さ来〉、舜と黒木のお気に入りだ。安くて美味(うま)いし、店の雰囲気が気取っていないのがいい。衝立(ついたて)で仕切った小上がりで、今日は真奈美を前にして、二人が仲良く横に並んだ。  肉じゃがにアジのフライ。ポテトサラダと鶏の唐揚げ。黒木と来ると、いつも同じような注文に成る。今日は真奈美も居るので、カキフライを奮発した。 「いいえ、いません。誰かいい人いませんかね?」                    舜と黒木が、0.6秒の速さで揃(そろ)って自分を指さすと、真奈美は噴き出した。 (黒木の奴、いきなり『ちゃん』付けするなんて、馴れ馴れしい奴だ。本当に営業の奴は、あつかましい) 「真奈美・・・ちゃん。この前、応接室から水盤ば持って来よったね」  舜は、頭の中で『さん』と『ちゃん』を天秤にかけ、『ちゃん』を選択した。 (黒木がちゃん付けだから、自分がさん付けでは、浮いてしまいそうだ) 「はい。水盤に睡蓮の花が活(い)けてあったんです。内藤さん、花器(かき)に詳しいんですね」 「うん。俺のお母さんが生花の先生やからね。新池坊ば教えようと」 「え、本当ですか?私も、生花は新池坊なんですよ!」 「へぇ、奇遇やねえ」
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