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笑顔
その女の子は、今日も笑顔を教室中に振りまいている。
最近のぼくはというと、その太陽みたいな彼女にすっかり夢中になっている。
はじめは「明るい笑顔」だなんて、そんなものがあるのか、例え話くらいにしか信じていなかったけれど、彼女の笑顔を見つめるうち、ほんとにぼくの心まで明るくなってくる。
それで、太陽みたいな人間っているんだなぁって、興味がでた。
しばらくすると、ぼくの興味が何か別のものに変わっていくのを感じた。
それは何かもっと、こそばゆい感じのものだった。
どうしたら、彼女の笑顔が今よりもっと沢山見られるだろうか、だなんて考えだすようになった。
その事がぼくの頭にパサっと覆いかぶさって、勉強がすっかり身に付かなくなってしまったから困ったものだ。
ぼくの頭は一体どうかしてしまったのかと頭を抱えていたそんなある日、彼女は花飾りをつけて教室に入ってきた。
女子達が、すかさず周りに集まってくる。
あっという間に取り巻きの中心になった彼女は、
「えー、それどうしたの?かわいい!」
「とっても似合ってるね~!」
とか何とか取り巻きにちやほやされるのを上手く振りほどいて、僕の隣にちょこんと座る。
それで横からぼくを眺めてくるものだから、ちょっとばかし頭が沸騰してしまった。ほんとに困ったものだ。
「ねぇ、あのさ。この花って知ってる?」
彼女が頭の花飾りを指差して、ぼくに問いかける。
「うん、知ってるよ。ガーベラっていうんだ。」
「へぇ、ガーベラかぁ。なんだか上品な名前だねぇ。じゃあさ、ガーベラの花言葉って知ってる?」
「ううん、知らない。今日の放課後、図書館に行く用事があるから、調べてくるよ。」
「えーありがとう!あしたが楽しみだなぁ。」
教えてあげたら彼女は笑顔になるかな。
ぼくのほうこそ楽しみだった。
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