41人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
笑いを堪えながら、俺は答えた。
「……は? そういうんじゃないだろ、俺たち」
「え……だって、僕に声を掛けてくれたじゃない」
「あ、何? 二週間前のナンパのこと?」
「う、うん……」
この男、思いの外世間知らずだな。街中で声を掛けられたら恋に発展するとでも?
「……言ったよね? 俺がおまえを抱く代わりにおまえは俺に住み処を提供するんだよ。それだけの関係だろ」
「……そんな言い方してなかったよ。“抱かせて。家に連れてってよ”って、君がそう言ったから……」
男は眉を下げながら、ヒクッと口角を上げた。こんなときにも愛想笑いかよ。ご苦労なことだ。
まぁ、俺はそういうお人好しそうなところに付け込んだんだけどね。
「……子どもじゃねぇんだからわかるじゃん、そんなの。言われねぇとわかんねーの? 」
「……紫音」
「最初から好きじゃねぇよ。おまえのことなんて」
俺はそう言い捨てて風呂場に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!